ロタウイルスは乳幼児の胃腸炎の主な原因です。嘔吐と下痢、発熱が主な症状です。冬から春にかけて流行し、「白っぽい下痢」、「酸臭の下痢」としてよく知られます。世界では年間約53万人の子供たちが命を落としているという報告があります。日本でも6歳未満の小児のうち年間約80万人が外来受診していると予想され、うち10%程度が脱水をきたし、入院治療を要するケースも少なくありません。脳炎や腸重積症、腎不全などの重篤な合併症が存在するのも特徴です。伝染力は非常に強く、感染者の便から数週間〜1か月程度排出されます。
ロタウイルスは多くは初感染で重症化します。5歳頃までにほぼ100%の乳幼児が感染し、感染を繰り返すと徐々に軽症化します。小学生や成人でも感染する場合がありますが、3回目以降の感染では多くは無症状、あるいは軽症です。
●ロタウイルスワクチン
ロタウイルスワクチンは現在2種類が存在しています(ロタリックスとロタテック)。いずれも生ワクチンです。どちらも生後6週以降(当院の推奨は生後2か月からヒブ、肺炎球菌、B型肝炎ワクチンとの同時接種)14週6日までに初回接種を開始することが推奨されます。両者の特徴は以下の通りです。
・ロタリックス:2回接種。対応するウイルス株は1種類ですが、それ以外の株に対しても病気の発症を抑えることができます。2回の接種で済むため比較的ワクチンスケジュールが組みやすく、短期間で病気に対する抵抗力をつけることができます。
・ロタテック:3回接種。対応するウイルス株は5種類で、より多くの種類のロタウイルスに対して抗体を獲得することができます。これは非常に有効な特徴ですが接種回数が多いために同時接種を導入しないとロタウイルス、同時期に接種が推奨されるヒブ、肺炎球菌などの感染症予防が遅れてしまう可能性があります。
副作用としては10%未満の確率で下痢が認められます。ロタウイルスの経口生ワクチンが初めて使用された際、腸重積症の報告が増加しました。現在流通しているものとは全く別のワクチンであり、ロタリックス、ロタテックに関しては腸重積症の患者が有意差をもって増加したとの報告はありません。ただ、ロタウイルスの経口生ワクチンを使用する際には、有効性とともに腸重積症の症状(激しく間欠的な啼泣、嘔吐、血便)を理解して子供たちの体調変化に気を配る必要があるでしょう。ワクチン使用後、7日以内に発症する可能性があり、1か月程度は経過観察を要すると思われます。
日本では比較的新しいこれらのワクチンですが、既に海外では多くの国で採用されています。どちらのワクチンも有効率は非常に高く、80%以上の確率で感染を防止し、90%以上の確率で重症化を防ぐと予想されます。ロタウイルスの危険性を考慮すると是非接種いただきたいワクチンです。